Quantcast
Channel: みんかぶマガジン »ファンドマネージャー
Viewing all articles
Browse latest Browse all 10

日本国債の格下げは、円相場を妥当な水準に押し下げるきっかけとなるか

$
0
0

 本日(1/27)午後5時前(日本時間)に、スタンダード&プアーズ・レーティング・サービシズ社は、日本の自国通貨建て及び外貨建ての長期ソブリン(国債)格付けを、これまでのAAからAAマイナスに格下げした。これを受けて、外国為替市場では円が売られ、日本時間午後5時10 分頃までには、対米ドルでは格下げ発表前の82.20 円近辺から一時83.20 円近辺へ、対ユーロでは発表前の112.70 円近辺から一時113.60 円近辺へと、下落をみせた。

 この格下げが、たとえば外国人投資家の売りを引き起こすなどして、国内債券・株式市場に与える悪影響は、極めて限定的だろう。

 まず長期国債市場においては、格下げが悪材料であることは間違いがない。しかし外国人投資家(海外政府を含む)の国債等の保有は、全残高の6.5%に止まっており(※1)、ギリシャ等欧州周縁国のような海外勢の売りによる国債価格下落の可能性は、極めて限定的であろう。また現在、日本の名目経済成長率が低いことに加え、日本銀行が緩和気味の金融スタンスをかなり長い間続けそうなことも、国内長期債券相場を下支え(利回りを抑制)する形となろう。

 国内株式市場においては、円安が輸出企業の採算改善期待を拡大し、株価を押し上げる方向で働くものと予想される。国債の格下げ自体は、日本全体にとって悪材料であるが、外国人投資家においては、日本の主要企業はグローバル企業であるとして、日本のマクロ経済・財政と優良企業の企業収益とを、分けて考えることも多い。円安は、外貨換算した際の日本株の価値を押し下げる方向で働くが、世界的に債券投資家に比べて株式の投資家は、為替変動より現地通貨での株価の動きを重視する傾向が強い。また大規模な海外機関投資家(大規模年金など)においては、株式投資を判断するファンドマネージャーと為替動向を判断するマネージャーを分けている場合もあり、円安が、為替差損を嫌った外国人投資家の日本売りを直接的に引き起こす度合いは、小さいものと推察される。

 円相場については、未だに「円高神話」は根強く、一本調子で円安が進行するかどうかは、まだ不透明だ。長期的には、日本の財政赤字拡大は深刻な問題であり、国債格下げに伴う円相場の下落は、本来は日本人として憂慮すべきことであろう。しかし、日本の財政問題や名目経済の低成長、低水準の長短金利といった諸要因に比べ、現在の円相場は不当に高すぎると言える。もし今回の国債格下げをきっかけに円安が今後進行するのであれば、それは日本売りが深刻化していくと言うより、これまで過剰に高かった円相場が、日本のファンダメンタルズ(経済等の基礎条件)の悪さに見合った妥当な水準へと、修正していく過程であると考えるべきだろう。

(※1)2010 年9月末時点。日本銀行「資金循環勘定」による。「国債等」は、国庫短期証券と国債・財融債の合計。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 10

Trending Articles