『日本経済のリスク・プレミアム 「見えざるリターン」を長期データから読み解く』
基本的に私は本を読むのであれば、精神の糧になるような本を読むべきであると考えていますが、その一方で仕事に必要とされる知識を吸収するための専門的な書物についても、大いに読めば良いと思っています。その中で投資家や経済全般を見る目を鍛えている方にお薦めしているのが、山口勝業さんの『日本経済のリスク・プレミアム―「見えざるリターン」を長期データから読み解く』です。
この本は投資運用理論として十分にアカデミズムのにおいのする優れものですが、投資の実証分析といってもいい本です。例えば、小型株への投資リスクは報われるのかとか、業績と株価との関係はどうなのかという、ごく普通に投資をする人が持つ疑問に対して実証的且つ理論 的に説明しています。もちろん今回の金融危機における例外的な事柄は除外しなければなりませんが、日本のマーケットについての長期に亘る実証分析から一つの法則性を見出すことは大変意義深いことであると思います。
著者の山口さんは米国にMBA留学し、旧長銀の資産運用部門にいた人ですが、在米9年半で得た米国流資産運用を生かし、ファンドマネージャーとしての経験を踏まえた書であるということもこの本の価値を高めている所以でしょう。私が知る限り日本でこのような本はありません。
『金融経済スペシャリストの本棚』の全文は、SBIマネーワールドポイントモールにて公開されています。
【スペシャリスト】北尾 吉孝:
1974年、慶応義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。1978年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券ニューヨーク拠点、事業法人三部長などを経て、1995年、孫正義氏の招聘によりソフトバンクへ入社、常務取締役就任。現在、SBIホールディングス株式会社代表取締役執行役員CEO。